コラム

2003/01/10

武蔵の克己心と求道心

2003.01.10 【武蔵の克己心と求道心】

▼今年のNHK大河ドラマ『武蔵』が5日、始まった。宮本武蔵はいつの世も世代を超えたヒーローで江戸時代に歌舞伎として演じられ、講談、浪曲さらには映画へと広がり、テレビの長時間ドラマの主役としてしばしば登場してきた

▼宮本武蔵は生存中も、死して後も、また現代においてもその人気は高い。現代における武蔵人気を決定づけたのは、言うまでもなく、国内外で2600万部の売り上げを誇る超ベストセラー・吉川英治の小説「宮本武蔵」であるが、それ以前に行なわれた剣客の人気ランキングでも第5位塚原卜伝、4位小野次郎右衛門、3位伊藤一刀斎、2位柳生宗矩、そして第1位が宮本武蔵となっている

▼30年余にわたる苛酷な武者修行、諸国流浪の旅を乗り切ることができたのは武蔵自身の人間的魅力、人徳によるところが大きい。協調性がなく高慢な宣伝家といった当時よくありがちな兵法家とは対局にあった人物だからこそ行く先々で多くの知己を得、支援を受けられたのだろう

▼先頃、ある新聞社が実施した国民意識調査によると日本人が大切にしたいものは1位「人情味(18%)」、2位「正直さ(15%)」、3位「国際性・礼儀正しさ(ともに14%)」。「勤勉さ」「独創性」は最下位だった。上位に異論はないが、明治以降の近代化、戦後復興を支えたはずの勤勉さが軽んじられている現象は憂慮すべきだ

▼武蔵自ら筆を執った「五輪書」は各国語に翻訳され外国のビジネスマン、エグゼクティブに経営戦略の手引書として愛読されている。人柄に加えて武蔵のひたむきな勤勉さ、克己心、求道心は外国人の心をも引き付ける不滅のものなのだろう。

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