コラム

2003/02/06

同潤会アパート(本・UT)

2003.02.06 【同潤会アパート】

▼関東大震災から今年で80年になる。震災直後、焦土と化した東京、横浜の住宅事情は極めて劣悪だったという。焼跡や学校、公園などに無秩序にバラックが建てられ、また家賃は異常に高騰していた

▼こうした背景のなかで1924年(大正13年)被災者への住宅供給を目的に財団法人同潤会が設立された。同会はまず、郊外に木造住宅3420戸と、仮設住宅2158戸を建設。その後、都心に近い場所に鉄筋コンクリートのアパートを建設し、東京(13ヶ所)、横浜(2か所)で2500戸余りを供給した。独身職業婦人のための、大塚女子アパートもこの時に建てられた

▼同潤会アパートの設計は、当時としては画期的なものだった。最新の設備を誇り、和洋折衷の生活様式に適合するような工夫がなされていた。家賃は比較的高めであったが、それでも申し込みが殺到し、常時満室の状態だった

▼同アパートは、戦後東京都の管理化に置かれ、その後は居住者を対象に分譲された。しかし、女性自立の象徴・大塚女子アパートだけは、唯一公共住宅として維持され続けてきたのである。昨年12月9日に、東京都東部住宅建設事務所において、1件の入札が執行された。件名は「都営大塚女子アパート除却工事」。翌日に契約。2月上旬から解体作業に入る予定となっている

▼先月27日、タレントの永六輔さんや作家の戸川昌子さんら都民有志が、同アパートの取り壊し中止と適切な管理を求めて住民監査請求を東京都に提出した。近代建築史のみならず女性史、社会史的にも価値が高い文化財という見方である。今後、東京都の対応に着目したい。(本・UT)

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