コラム

2003/02/13

老後不安は解消できるか(立・JI)

2003.02.13 【老後不安は解消できるか】

▼数年前、都内で77歳の母親と41歳の息子が餓死するという事件があった。息子は病気がちで外出もままならず、母親に支給される月額約4万円の年金だけで2人は生活していた。飽食といわれるこの国で餓死者が出ることに驚くが、これが他人事ではない。2004年度の年金改革により年金給付が減額となるからである

▼年金改革は年金制度への不安感、不信感解消を目的とする。現在の年金給付は手取り賃金の現行59%。これを段階的に下げ、2032年以降は52%にするという。さらには保険料率も現行の13・58%から毎年約0・35%ずつ引き上げ、2022年度で20%とする。現役時代も老後も、ますます家計は苦しくなる。出生率低下、高齢者増加を鑑みれば仕方ないことなのか

▼それでも一般的な会社員であれば生活していけるだけの年金はもらえるという。一般的というのがどの範囲を指すのかはわからないが、これは満額もらえる人の場合であって、貯蓄がなければ生活できないという状態の人も多いだろう。苦しい家計をやりくりし貯金に励まなければならない

▼その貯蓄を狙う詐欺も多い。孤独な老人に言葉巧みに近づき財産いわゆる「虎の子」を奪う。詐欺には合わなくとも借金はあるかもしれない。寝たきりや痴呆になるかもしれない。介護を必要とするかもしれない。さらに医療負担増も考えられる。老後の不安は尽きない

▼年金で悠々自適な老後生活を送るなど夢のまた夢。改革で年金制度への不安がたとえ消えたとしても家庭の台所事情が厳しいことには変わらない。医食住すら望み通りに満たすことは難しそうである。餓死は他人事ではない。(立・JI)

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