コラム

2003/06/20

世に巣食う妖怪たち(松・JI)

2003.06.20 【世に巣食う妖怪たち】

▼笙野頼子著「東京妖怪浮遊」に登場する妖怪はモデルが実在の人物である。妖怪とはいえ姿形は人間のようで、逆にすぐそばにこうした妖怪がいることも想像できる

▼まず「ヨソメ」。都会に出た女性が、結婚も出産も恋愛もせず社会的保証もなく、それでも東京で生きていると40歳前後で妖怪になる。それが「ヨソメ」だ。ふだん姿は見えないが、まれに見えるとうとまれる。人間との接触は少なく、猫の妖怪「スリコ」と暮らす。「空母幻」は、相手が男性だとおとなしく女性であれば取り込もうとする。ただし美人には手がでない

▼心を探り一番痛い部分を見つけ絶望させる「さとる」。色欲も虚栄心も強い破滅型ナルシスト「裏真杉」。今日も明日もないが絶望せず、しかし幸福そうでもない八頭身の漂流美少年「すらりんぴょん」は人の懐に軽々と入り込み、いつまでもつきまとう。妖怪ではなくとも似たような人物に被害を受けたことはないだろうか。ひるがえって自身を見つめると、自分もまた妖怪の一種かもしれないと感じる

▼現実にも妖怪めいた人物はいる。携帯電話で罵声を浴びせ借金返済の取り立てを行なう、所在不明の「090金融」。一見普通だが人目につかぬ腕だけが異常な動きをする、満員電車内の「痴漢」。紫の煙を吸ったり吐いたりする「ニコチン中毒」等々。

▼さて低迷する我が国の経済。上がらぬ賃金、下がらぬ失業率。低い利率や株価に経営危機もある。人々は長く苦しめ痛めつけている。ここまで不景気を継続させているのは、やはり妖怪の仕業ではなかろうか。それが、どこの誰かは不明確だが、昨今、時々見えるようだ。(松・JI)

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