コラム

2003/07/26

治水と利水を考える(本・SY)

2003.07.26 【治水と利水を考える】

▼関東地方整備局の事業評価監視委員会を取材した。今回、審議されたのは荒川上流直轄河川改修事業、那珂川直轄河川改修事業、霞ヶ浦導水事業、思川開発事業、一般国道6号牛久土浦バイパス、一般国道18号高崎安中拡幅など9事業

▼学識経験者で構成される委員側と整備局、水資源開発公団側との間で活発な意見の応酬があったのは霞ヶ浦導水事業と思川開発事業の2事業。整備局と公団が試算した両事業の費用対効果についてある委員が「費用対効果の算出方法が不明確である」と追求した

▼同局と同公団の試算では霞ヶ浦導水も思川開発も整備することで流域住民が受ける総便益費が整備に伴う費用を超えている。両事業とも治水・利水に関わる重要な事業である。総便益が総費用と比較して数百億円レベルのプラスではないように思い、委員会後に質問してみると「自治体が所管する利水事業は計算に入れていない」という答えが返ってきた

▼行政側は治水と利水を区別するが、地域の住民はその恩恵をまるごと受ける。「治水は国の事業、利水は自治体の事業」などと分けて考えない。「費用対効果の算出方法が不明確」という委員の追及も流域住民の感覚で対応すれば答弁に困ることもないはずである

▼霞ヶ浦導水事業により生み出された水は首都圏約2、000万人の生活用水に利用されるという。日本の全人口の6分の1に達する。「お金には換算できない」事業だ。整備局の治水事業にしても重要性に変わりはない。国民の大事な生命を守る治水・利水事業は企業会計と本質的に異なるものだと思う。でも、夜遅くまでの議論勉強になりました。(本・SY)

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