コラム

2003/08/12

マイホームが危機(水・YH)

2003.08.12 【マイホームが危機】

▼今年の稲作は日照不足で1993年以来の不作のようだ。しかし国民一人当たりの消費量が1割程度減少していることや備蓄などから供給は心配がない。美味しいご飯は我々庶民のささやかな贅沢である

▼ささやかと言えば吉田兼好は『徒然草』一二三段で「飢えることなく、寒くもなく、風雨にも侵されないで、心靜に日々を過ごすことは人の楽しみ。ただし人は誰でも病気になる。だから医療を忘れてはならない。衣・食・住と医療の4つに不足の無い状態を富んでいる」と言っている

▼第129回直木賞受賞作品『星々の舟』(村山由佳・著)の一頁のくだりは面白い。主人公・暁(あきら)の異母兄弟・美希(みき)はモデルハウスに勤務する。「ハウスを訪れるお客で自動開閉式の天窓、ジャグジーなど理想をかなえられる人はいない。夢と現実のギャップに何度も打ちのめされながら疲労困憊の末に家を建てるしかないのだ」と

▼そんな家が近年「シックハウス」として病気の原因となっている。建材・家具・日用品等からの化学物質の放散、暖房器具等からの燃焼ガス、シロアリ駆除剤など家庭内のほとんどと言って良い要因で目や喉の痛み、頭痛・めまい、吐き気などの症状を生む。いわゆるシックハウス症候群である

▼今年7月1日から建築基準法が改正され対策が講じられた。基本的対策には原因となっているホルムアルデヒドを含む資材等を制限、換気設備、天井裏の換気などだ。しかし、現実的には要因が多種多様で避けることは不可能に近いという。ようやく叶えた家が文字通り頭痛の種とは。ささやかだが、マイホームなのだ。(水・YH)

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