コラム

2004/01/30

かわやだんごの真実(前橋・HI)

2004.01.30 【かわやだんごの真実】

▼劇作家の別役実氏は、かつて「かわやだんご」について書き、ちょっとした騒動になったことを「別役実のコント教室」(白水社刊)で記している。「かわやだんご」とは、にぎりこぶし大の泥饅頭に細い糸がついているもの。昔、女性が便所で用を足す時にこのだんごを次々に便器に落として音をまぎらわしていたのだという

▼このエッセイを読んだある便器メーカーが自社のパンフレットに「江戸時代には、かわやだんごというものがあった」と掲載した。ところが、氏のこの話は全て嘘なのだという。彼が戯曲を書く前の頭の体操として行なっている、嘘ばかりを連ねたエッセイなのである

▼パンフレットを読んだトイレ研究家から氏に問い合わせがあり、結局「でたらめ」と話したという。あやうく民俗学辞典に乗るところだったというから、いかに真実味があったかがわかる。嘘にふりまわされたメーカーの困惑も目に浮かぶ

▼氏は嘘をつくことから笑いは生まれると述べる。なるほど年末年始のお笑い番組でも、多くの漫才師たちは自ら設定した場面で、絶対にありえないセリフや状況を示す。たとえばハンバーガー屋で、番号札の代わりといってポケットにエビが詰まったジャケットを着させられる、などというものがあった

▼政府の発表によると経済はやや上向きだという。虚々実々判断つきかねるところであるが、嘘であったならば、これはまさに「かわやだんご」の騒動では済むまい。実際、景気の向上につながれば笑いも生まれるだろうが、混迷が続くのならば多くの者が困惑するだけである。真であり、さらに上昇することを願うばかりである。(前橋・HI)

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