コラム

2004/01/15

努力という名のボール(前・KM)

2004.01.15 【努力という名のボール】

▼実家に帰ってふと目にした古いアルバム。しばし見入っていると、写真に紛れて新聞の切り抜きが1枚だけ仰々しく挟み込んであった。すっかり色あせてしまったそれは小学1年生の時に市のコンクールで入選した一編の詩。庭の緑と青いボール、そして夕焼け空。忘れていた記憶がよみがえる

▼当時、転勤族だった父と久しぶりに庭でしたキャッチボールが題材。どちらの親に似たのかセンスがなく、まるでコントロールが定まらない我が子に対して、何気なくボールを返す父。そんな父への疑問を「毎日どこかで練習しているのかなぁ」と表現したことが、審査員の心をつかんだのか

▼一部改正経営事項審査が適用されて2か月余りが経った。経審のX1評点(完成工事高)の評点テーブルが線形式に変わり、これまでより完工高が評点に細かく反映される。新基準によりどれくらい点数が増える企業がいるものか。ダンピング受注の排除が改正目的の一つではあるが、いずれにしても企業側が完工高を上げる努力は認められた

▼算出方法が線形式でも階段式でも、審査内容はあくまで数値のみ。道路や下水道の工事で資材を仮置きするために空き地を手配する苦労は評価に値しない。今後はISO取得者や公認会計士の監査などが経審の評価対象に加わる動きがある。企業努力が適正に報われる審査方法の確立が望まれる

▼思えば、学生時代から実家を離れ、自分の足元をしっかりと固めて歩んできたつもりだが、おかげですっかり親に気苦労をかけてしまった。あれから30年近く経った今、まだ形にならない努力という名のボールを、病床にいる父はどう受け止めるのか。(前・KM)

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