コラム

2004/07/24

ブーの死と2、3のこと(長・EM)

2004.07.24 【ブーの死と2、3のこと】

▼記録的な暑さが続いた7月の半ば、実家の飼い犬が死んだ。フーテンの父と雑種の母の間に生を享け、茶色の毛に垂れた耳を持ったその犬は、名を「ブー」と云った

▼小学校へ通うのにも1時間程かかる田舎ゆえ、番犬としての責を課せられることはない。花が咲けば眺め、蝶が舞えば追い、日がな一日のんびりと暮していたように思う。享年20。人は皆、大往生と言ったが、家を出る大分前から世話をおざなりにしていたため、悔いばかりがのこる。「鎖で繋いでおきながらのんびりとは」。泉下から甲高い鳴声が聞えてきそうだ

▼フランク・パヴロフ著『茶色の朝』の一節。「茶以外の猫を飼ってはならぬ」という法律により白地に黒のブチ猫を安楽死させた主人公。ある日、友人から黒い犬を処分したと聞かされる。法律が犬にまで広がったからだ。止め処ない日々に追われ、何時しか思いは薄れる。その間も規制は激しさを増し、終には「前に茶以外の犬や猫を飼っていた者」も逮捕される事態。友人が捕えられ、主人公は初めて後悔する。「最初の法律ができた時、声を上げるべきだった…」

▼一方的な押付けは、矛盾で軋み、やがて破綻へと向う。これが世の習わしだろう。昨今はとかく、辛く厳しい事柄がまかり通る。あたかも、公然と不用論が叫ばれる公共事業や、業界を取り巻く現状に重なる

▼たゆまずに考え、動き続けることは、当り前のようで難しい。八方手を尽そうとも、大なり小なりの後悔は必ずや付いて回る。それでも「遅すぎる事など一つもありはしない。何するにせよ思ったときがふさわしいとき」。とある唄の文句に縋りたい。(長・EM)

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