コラム

2004/08/25

カタカナ文語体のお城(本・SY)

2004.08.25 【カタカナ文語体のお城】

▼「不動産ニ関スル物権ノ得喪及ヒ変更ハ登記法ノ定ムル所ニ従ヒ其登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」このカタカナ文語体は民法第2編物権の第177条である。企業で土地や建物などの不動産取引の実務を担当されている方にとっては、六法全書を見なくともスラスラと暗記されている条文だと思う

▼この条文は、土地や建物が商取引などにより所有権移転する際に登記所で「登記」をしておかないと、第三者に対して所有権が主張できない、という不動産物権変動の鉄則である。ある土地を購入しても、登記していないと、その取引を知らない第三者が当該土地を購入して登記した場合、その第三者には土地の所有権を主張できない、ということである

▼民法は、この不動産物権変動の分野から、債権債務の問題、各種契約、家族の問題に関する親族法・相続法に至るまで市民生活に最も密着した法律である。明治31年に施行されて以来、たびたび一部改正が行われてきた

▼戦後、「家」制度の見直しにより、同法のうち、親族法と相続法がいち早く口語化された。総則・物権・債権などの条文も口語化が検討されてきたが、その量が膨大なことに加え、民事訴訟法など他の法律口語化が優先されたため、手つかずのままだった

▼しかし、この「カタカナ文語体の壮麗なお城」とも言うべき民法総則・物権・債権の条文もついに来春の民法口語化法案の施行に向けて動き出した。「木戸銭」など現代では使用されない言葉が数多く条文に含まれているというのが理由のひとつである。「国宝級建築物」がまたひとつ消えていくことになる。(本・SY)

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