コラム

2005/05/18

身近な文化遺産に触れて(本・MM)

2005.05.18 【身近な文化遺産に触れて】

▼上野駅の西側、不忍池(しのばずのいけ)にほど近い東京都台東区池之端に1896年(明治29年)、日本の建築史に残る西洋館が建った。三菱財閥の創設者、岩崎家本邸である。3代目の岩崎久彌氏によって建てられた。文明開化時代を反映して和洋折衷の建物だった

▼眼を見張る西洋木造建築の西洋館は、日本館と統合、併設され、広大な庭園も備えている。近代建築の夜明けとともに、新しい日本の建築文化が始まった年でもあった。日本館は書院造を基調に、庭園は大名庭園形式を踏襲している。いまは都が管理している旧岩崎邸庭園にたたずむと、明治の息吹が聞こえてくる

▼当時、上流階級の間で建てられた西洋館は、数多くの客室を備えた「もてなしの場」として、また日本館は「生活の場」として、使い分けられた。西洋館と地下道でつながっている別棟「撞球室」(ビリヤード館)は、最高の娯楽場だった。スイスの山小屋を想わせる建物である。庭園を含めすべてが国の重要文化財に指定されている

▼この西洋館は鹿鳴館、ニコライ堂、上野博物館を設計したジョサイア・コンドル(英国人)の作で、岩崎邸も彼の代表作の1つであった。日本画を学び、日本人を妻とするなど終生日本を愛したコンドルの門下には、東京駅の設計で知られる辰野金吾、赤坂離宮を設計した片山東熊など近代日本を代表する建築家が多くいた

▼実はこんな文化環境に恵まれた地所に、小社のデジタル部門を管理する子会社がある。仕事の合間に文化遺産をたどるのも、ジャーナリズムの複眼とアンテナをさび付かせない、格好の機会と思い、立ち寄ってみた。(本社・MM)

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