コラム

2006/02/10

還暦ルーキーの教え(水・KK)


▼すごい人がいるものだ。ゴルフファンならご存知の方も多いだろう。還暦目前にプロテストに合格した神戸市長田区の古市忠夫さん。その彼が先日、某ラジオ番組にゲスト出演し自身の勝負哲学を披露した

▼古市さんがゴルフと出合ったのは30歳の時。「ゴルフの上達に必要なのは、金と暇と体力である」という格言があるというが、商店街の小さなカメラ店主の彼にとってはどれも当てはまらないと思われた。彼はその格言に「金と暇と体力は、どうにかこうにか作り出すものである」の一行を追加して自らを鼓舞した

▼徹底した倹約でラウンド費を捻出。仕事を手際よくこなし練習時間を作り、毎日走り体力アップに努めた。それでもラウンドは月3回がやっと。裕福な若者に比べれば条件は圧倒的に不利だ。彼は旺盛な研究心で1回1回の練習、ラウンドに情熱を注ぎ込んだ。「うまくなりたいという情熱があれば人生もゴルフもこれからだ」が信条だ

▼関西トップアマの古市さんをプロゴルファーへと駆り立てたのは阪神大震災だ。自宅兼店舗を焼失、唯一残ったゴルフバッグを見て一念発起。2000年9月、20代の若者に混じって59歳11か月で見事史上2番目の高齢合格者となった

▼人生を賭けた大一番で才能豊かな多くの若者がプレッシャーに押し潰され涙を呑んだ。古市さんは「多くの人の支えでこの場に立てるんだ」という感謝の気持ちで平常心を保ち続けた。彼は震災復興に奔走し、30年以上消防団員として地域のため尽くしてきた。「コミュニティーがあって自分がある。感謝の気持ちを忘れてはいけない」苦労人の言葉には重みがある。   (水・KK)

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