コラム

2006/04/12

新アトラクションの行列(本・JI)

新アトラクションの行列

▼3歳の息子を初めて遊園地に連れていった。園内は非現実的な空間である。上空では曲がりくねったレールに沿ってバイクが走り、鉄塔からぶら下がった小さな飛行機群はぐるぐる回る。周囲から明るい音楽が流れてくる一方、絶叫マシンからは悲鳴も聞こえる。見たこともない異次元空間に迷い込んだ息子は、恐怖のあまり硬直していた

▼しかし子供は新たな環境にすぐ慣れるもの。ちんちん電車や空飛ぶカタツムリを自ら運転し上機嫌。観覧車でも真下に見える園や遠くの町並みを楽しんでいた。最初の驚きはどこへやら、持参した弁当を食べたあとも園内を走り回り続けた

▼糸井重里著『智慧の実を食べようー学問は驚きだ』(ぴあ刊)は、HP「ほぼ日刊イトイ新聞」主催の講演会をまとめたもの。最先端の学者4人による難解な話を「理解できないが聞いてみよう」というイベントである。なるほど難しい内容だが、話し言葉のため実に読みやすい

▼この中で、東京大学・岩井克人教授は「会社の行方」と題して講演。現代は、他企業との差異性を意識的に作り出さなければ利益が生み出せない時代−と語る。しかし、違いはすぐに模倣されるため、新しい差異を常に作らなければ利潤が生まれない状態だという。機械ではなく、違いを生み出す能力や知識を持つ人間が最も価値を持つ社会である−と説いている

▼訪れた遊園地も新しいアトラクションを宣伝、その成果もあって実際に長蛇の列となっていた。斬新な企画、熱心な営業による結果である。今度は何が待ち受けているか、息子と同じように、いや、より以上に次の機会を楽しみにしている。(本・JI)

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