コラム

2006/08/03

技術の詰まった両腕(前・HM)


▼先日、70歳を過ぎた元大工さんと話しをする機会があった。元、といっては失礼だ。今でも、あちこちから呼ばれては、物置を造ったり、ちょっとした修繕などを行っているそうだ。本人は、「そろそろ引退したい」と冗談まじりに言っていたが、周りからは仕事を頼まれる。これまでのつきあいもあるだろうが、腕もいいのだろう

▼若い頃には、地元大手の建設会社から、「是非うちに」という話しも再三あったそうだ。しかし例え小さな物件でも、地元の人に喜ばれる仕事を優先したい、と一人親方を貫いたようだ

▼昨今、技術力の継承が問題となっている。いわゆる2007年問題だ。中間層が少ない事が大きな要因のようだが、今技術がどんどん失われつつある。聞きかじった話だが、戦艦大和を今の技術力で造る事は難しいそうだ。スクリュー部分など、高い技能を持った鍛冶職人でないと作れないところがネックになるらしい。お話しした大工さんのお子さんは建築関係の仕事ではあるそうだが、「大工」ではないらしい。ここでもまた、経験に裏打ちされた技術が失われそうな状況がある

▼総務庁のまとめによると、17年国勢調査の結果、大工人口は約55万人と前回調査時に比べて約9万人以上も減少していることが判明した。しかも、この「大工」の中には型枠大工も含まれているため、純粋な建築大工はさらに少ない数字になる

▼「必要とされる間は、がんばりたいよね」と話す大工さん。70過ぎとは思えない丸太のような腕をしている。生活を支え続けた両腕だ。そこには、これまでに培った技術と経験がみっしりと詰まっているのだろう。(前・HM)

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