コラム

2006/10/04

13年目の奇跡なるか(本・SW)


▼プロ野球のパリーグが熱い。契約4年目でついに結果を出したヒルマン監督率いる日本ハム、常勝軍団の西武、2年連続でシーズン1位ながら、プレーオフに泣いたソフトバンクの3チームが激戦を繰り広げている。今年こそソフトバンクはプレーオフを勝ち抜き日本シリーズに望めるか

▼でも、筆者が密かに期待しているのは西武。特に福地寿樹(ふくちかずき)選手を応援したい。93年、広島へ入団。おもに代走や守備要員で出場したが、監督が代わり、開幕前に西武へトレード。事実上の戦力外である

▼プロ入り13年目。昨年までの12年で312試合に出場し、打率2割3分7厘。本塁打1本。盗塁69で足のスペシャリストだった。ところが一昨年の春季キャンプ中に靭帯を断裂、1年を棒に振った。親しい知人に「もう俺はダメかもしれん…」と漏らしたという

▼獲得した西武の伊東監督も、当初は代走などでの起用を考えていた。移籍して「積極的に打っていこうとした」結果、広島時代以上の成績を挙げる。12年で1本の本塁打は、今季1年で4本。盗塁はリーグ3位で自己最多の25。伊東監督に「福地の加入は大きかった」と言わせるほどの好成績だ。レギュラーを奪う活躍で、移籍がターニングポイントになった

▼引退する新庄のいる日本ハムにも頑張ってほしい。ソフトバンクにも病床の王監督の無念を晴らしてほしい。でも「戦力外」という土俵際に追い込まれながら這い上がってきた、13年で1度も優勝の美酒に酔ったことのない苦労人・福地に味わわせてあげたい。そのとき、これまでの苦労と涙が酒と一緒に流れていくに違いない。(本・SW)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら