コラム

2007/03/29

良く見て身を守る(東京・JI)


▼眼球の表面をえぐられた。息子のふりまわしたダンボールの角が直撃したのである。痛いというより、苦しみで動けなくなる。ともかく目を押さえつつ近所の眼科へ。傷は広範囲にわたるものの「治る」との言葉に安堵した。視力にも影響ないという。まさに不幸中の幸いである

▼この日から眼帯をしての行動となった。周囲との間合いが取れず、あちらこちらで激突する。前から来た人とぶつかる、人にあいさつしたら死角にあった衝立にあごをぶつける、歩いていて柱に頭をぶつける、これら二次災害を起こしてばかりである。ひとつひとつの行動の際に「よく見る」ということが、身を守る手立てとなっている

▼建設業界で今やこの名を知らない人はいないであろう、桐蔭横浜大学のコンプライアンス研究センター長の郷原信郎氏の著書『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)を読んだ。同書には「単純に法令遵守を徹底しても世の中の問題は解決できない。法令の背後にある社会的要請に応えることがコンプライアンス」とある

▼ビジネスホテルチェーン運営の東横インが、検査後にバリアフリー施設を撤去した事件については「潜在的要請を無視して顕在化した要請に応えることだけに突っ走った」と表現している。表面に見えているものだけでなく、見えていないものも見ようとすることが必要なのだろう

▼眼球の表面組織はきちんと再生する。自分のことながら、人間の自然治癒機能に驚くばかりである。さて地域経済や建設業界も、きちんと再生するのだろうか。さらに政策立案者は、見えていないものを見ようとしているのだろうか。(東京・JI)

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