コラム

2007/07/23

予定価格を考える(東京・UT)


▼夏本番を迎え、デパートでは早くも夏物衣料の安売りが始まっている。「5割引」「3割引」の大きな文字が、目に飛び込んでくる。民間の商行為では、在庫処分などの理由から、採算を度外視して販売していると思われるケースがしばしば見受けられる

▼公共調達では昨今、ダンピング受注の嵐が吹き荒れている。特別重点調査などの対策が機能している国交省直轄工事では沈静化されつつあるが、「前施工だからどうしても受注したい」「実績のためにやるしかない」といった動機は、今後も存在し続けるだろう

▼公共工事の予定価格は契約予定金額の上限値であり、資材単価の変動などはあるものの、本質的にはデフレスパイラルの構造になっている。予定価格算定の実績調査では異常値を除外しているが、昨今のように低価格受注が全体的な傾向の場合、引っ張られるように下落するのは必至といえる

▼「落札率90%以上は談合の疑いあり」といった誤解が、あたかも常識のようにみられている現状に対し、今こそ毅然と反論することが必要ではないだろうか。競争社会といわれるアメリカでさえ、落札率は93%程度とされる。予定価格は現場で歩掛や労務費を調査したマーケットプライスだということを、堂々と主張したい。国交省直轄工事の応札率が100%付近からずれていないことが、何よりの証拠だろう

▼「5割引」「3割引」が反映されて、翌年以降に夏物衣料の価格が下がり続けることは決してない。大前提は「定価」なのだ。さらに言えば、調達段階で手に取って品質を確認できない公共工事は、「5割引」の概念が最も縁遠い存在なのである。(東京・UT)

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