コラム

2007/07/25

トイレで考える優しさ(山梨・CT)


▼事件はトイレで起こった。「水が流れない・・・」。一大事である。身支度を調え、立ち上がりドアに手をかけた。「あれ?」水の流れる音がしない。レバーがない。操作ボタンがたくさんあるにもかかわらず、肝心な器洗浄がない。センサーが着座を感知して洗浄機能が作動するタイプだと思っていた

▼狭い個室の中で左右に体を動かしてみたり、どこかにボタンが隠れているのかと便座をのぞき込んだり文字通り右往左往。途方にくれたその時、突然「ジャー」あっけなく問題は解決。センサーの感度が悪かったのか、釈然としないままドアを開ける

▼おもしろい写真展をやっていると聞き横浜の日本新聞博物館まで出かけた。「KidsPhotographers子どもは天才!」と題し、小学生から高校生までの23人の子供たちが「ボクのワタシの好きなモノ!」をテーマに撮影した作品展。可愛らしい子どもの寝顔、愛犬やVサインしているバスの運転手さんなど。どの写真も個性あふれる素晴らしい出来だ

▼だがこの写真展が話題になったのは、作品の質だけではなく撮影した子供たちが、横浜市立盲特別支援学校に通う生徒達だったこともある。初めてカメラに触れるという子どもが、ほとんどだったという。お土産に写真集を購入した。眺めながらトイレでの出来事を思い出す

▼新しい施設では公共だけでなく、民間の建物もバリアフリー化が進んだ。それでも一見便利に思える多機能なトイレにとまどうのはなぜだろうか。これから作られるすべての建物に作り手は思いやりを込めて欲しい。視覚が閉ざされている彼らは、触れながらその想いを感じ取るはずだ。(山梨・CT)

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