コラム

2007/09/13

真昼のビーナス(埼玉・AO)


▼「どこか連れて行って」と子ども達にせがまれて、近くの山へドライブに。若かりしころは、よく走りに行ったあの山だ。その山頂にはかつて、東京大学東京天文台・堂平観測所があった。今ではその役目を終え、口径91?の反射式望遠鏡と建物は地元が払い下げを受け、周辺一体は「星と緑の創造センター」として町の観光拠点となっている。その望遠鏡をのぞきに行った

▼下界とちがい、標高876mの山頂の風は一つ季節を飛び越したよう。駐車場から天文台まで、整備の進む周辺を見ながら歩く。景色は絶景。都心の高層ビル群、東から北へ目を転じれば筑波山、日光連山、赤城山など一望の下に

▼しかし、真昼間に星が見えるのか?と思いつつ、望遠鏡の前に立った。係の人の説明によれば、金星が見られるとのこと。早速、接眼レンズをのぞいてみる。宵の明星、明けの明星、ビーナスと言われる金星がそこにあった

▼記憶は30年前に遡る。小学校の先生から薦められた本を思い出した。題名は忘れてしまったが、太陽系の惑星について書かれたもので、金星の項目には確かに「昼間でも見える」と書いてあった。30年の年月を経て、この日ようやく実感できた。子ども達も、はじめて見る望遠鏡の大きさにビックリしながら、昼間の星に驚き、満足げ。何度も何度ものぞき込んでいた

▼本は知識の宝庫。自分が体験できないことや知らないこと、いろいろなことを疑似体験できる。真昼のビーナスについては、30年前に本で得た知識だが、図らずもようやく自らの目で実証した。百聞は一見にしかず。頭でっかちにならないよう、本で得た知識を実践したい。(埼玉・AO)

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