コラム

2007/09/19

なくしてはならないもの(群馬・HI)


▼「子どもが『おばあちゃん、隣のうちが大変だ!』と言って走ってきた。外に出てみると、隣の家の裏に土砂が流れ込んで、お風呂場がやられたようだった。今度は、大きな石がこっちに落ちそうだって、慌てて公会堂に避難してきた」

▼筆者の住む群馬県富岡市は、台風9号が上陸する前の9月5日から、強い雨が断続的に降り続いた。夜の10時、ドシンという音と振動を感じ、外に出ると、50m程離れた所で土砂崩れが発生。近くに住む人が自主的に避難した。冒頭の言葉は、避難所で聞いたその人の話である

▼群馬県西部に住む多くの人にとって、今回の台風では、これまでに無い危機的な大雨を経験した。すでに5日のうちに川は一気に増水。そして、これ以上、雨が降り続けばどうなるのか不安は増すばかり。6日の上陸を前に、多くの人が「今回は危ない」と感じた

▼台風が関東を離れた7日午後から、少しずつ被害状況が明らかになった。最も大きな被害を受けたのは、長野県と県境を接する群馬県西部の南牧村。「あ、道がない!」住民が目にしたのは、台風が残した深いつめ跡だった。土砂に飲み込まれた自動車や家屋。川沿いに走る道路は崩落した土砂で埋まった。川に浮かぶ橋台は、そこに橋が架かっていたことを意味していた

▼道路が村内数カ所で通行不能となって、複数の集落が「陸の孤島」となった。ライフラインも途絶え、冷蔵庫の食料も腐敗し、道路の確保が急務だった。建設業者がバックホウとともに現れ、仮設道路を切り開き、自動車が行き来できるようになった時の安堵感。なくてはならない、なくしてはいけないものを感じた。(群馬・HI)

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