コラム

2007/11/28

素晴らしい面構え(東京・UT)


▼「面構え」。最近、めっきり聞かなくなった言葉のひとつではないだろうか。「えらそうな面構え」とか「不適な面構え」といった言い回しで使われることが多い。もしかしたら、あまり良いイメージの言葉ではないのかもしれない

▼10月末日、都内で開かれた「卓越した技能者の表彰式」を取材した。今年度は電気めっき工、かわらふき工、石彫工、からくり技師ら、現代の名工150人が受賞。中には美容師、フラワー装飾師、和服仕立職など、女性も多数いらっしゃる。会場を見渡すと、心なしか素晴らしい「面構え」の方が多い

▼並々ならぬ努力を、長い年月にわたり続けてきた人だからこそ得る「何か」が、きっとあるのだろう。少子化が進展し、熟練技能者が引退過程に入っている今だからこそ、「匠」の技術の価値を再認識したい。卓越した技能者を尊重する気風が、今よりもっと浸透してほしい

▼一方で、若手の名工もいる。受賞者の中で最年少だったのは、新潟県の渡辺文彦さん32歳。伝統建具の製造に従事して培った知識や技術を有し、建具技術の中で最も難しいとされる組子(くみこ)製作を修練。昔ながらの丁寧な手法で、地場産業に貢献している。さらに、アメリカやドイツで組子のワークショップや実演を行い、世界に日本独特の建具技術文化を広める活動に取り組んでいるという

▼取材後、鏡に向かい自分の「面構え」を再確認してみたが、予想通り良い意味の迫力には欠ける。いつの日か、この表情に「何か」がプラスされる日はくるのだろうか。他力本願というわけにいかないのだから、まさしく自分自身に懸かっている。(東京・UT)

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