コラム

2008/02/25

法令順守と伊丹十三(東京・JI)


▼「偽」が昨年を表す漢字として選ばれたように、業種を問わず「偽装」の発覚が社会をにぎわせている。特に目立つのは食品分野。賞味期限切れ材料の使用、品質表示ラベル貼り替えなどが多くの企業で行われていた

▼(社)日本建設業団体連合会(日建連)が昨年11月に行ったコンプライアンス研修会で、講師の國広正弁護士は「リスク管理とコンプライアンスの実務」をテーマに講演。その中で伊丹十三監督の映画「スーパーの女」(平成8年)の話が出た

▼映画では、深夜のスーパーで精肉部チーフが和牛と輸入牛を混ぜ合わせていた。主人公の女性にとがめられると「どこでもやっている。客もわかって買っている」と反論。國広弁護士は「10年前はこうしたことが行われていたが、これが今ならそのスーパーは廃業」と話していた

▼精肉部チーフを演じた俳優の六平直政氏は、映画出演で人気が上がりテレビ出演が増えた。伊丹監督作品を支えた俳優・スタッフへのインタビューをまとめた「伊丹十三の映画」(新潮社)で、六平氏は伊丹監督に感謝の辞を述べている。彼のみならず掲載されている誰もが感謝しているが、一方では伊丹監督の細かな注文に苦労があったことも漏らしている

▼細部に徹底的にこだわった伊丹監督。映画という、ものづくりに対するこだわりが、すべての作品に投影されていたようだ。自らが作り出すものに対して誇りと自信があれば、偽装しようなどとは決して思わないだろう。映画監督のみならず多才だった伊丹氏の仕事を展示する「伊丹十三記念館」は、愛媛県松山市にあるという。いつか訪れてみたいと思っている。(東京・JI)

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