コラム

2008/03/06

公共事業の夢とドラマ(群馬・HI)


▼「公共事業」そう聞いてイメージする内容は受け手によって様々だが、税金を使う部分だけを強調した偏った報道により、「税金の無駄使い」というイメージを持つ人が多いのは寂しい限りだ。筆者が公共事業について考えるときに思い出すのは、長野県佐久市(旧浅科村)に、私財を投じて20?におよぶ用水路を切り開き、原野を開墾した市川五郎兵衛真親だ

▼今から約400年前の戦国時代末期。関東6カ国の大名だった徳川家康は天下を取る前、要衝である上野国(群馬県)の南西に暮らす山岳の精鋭軍、市川一族が気になっていた。これまでに敵・味方と寝返り続け、なぜ小さな谷の痩せ地でのつましい暮らしを続けるのか、本音をつかめなかった

▼家康は直接、市川一族の領主、五郎兵衛を江戸に呼び被官を要請。しかし五郎兵衛はこれを断った。天下統一前とはいえ、家康の力は絶大。要請を断ればどのような仕打ちを受けるか。五郎兵衛は覚悟を承知で言った。「武士を捨てる。新しい職能集団として生きることを認めたほしい」

▼家康の理解を経て、自由に鉱山や新田開発ができる朱印状を得た市川一族は、砥石の採掘に成功して一族は潤った。そのとき五郎兵衛は、ある決意を実行に移そうとしていた。それはかつて見た信州(長野県)の原野に用水を引き、開墾することだった

▼一家の主人として責任と役割を果たした上で、自分の夢を実行に移した心意気に打たれ、また、そうまでして実現したかった用水路事業に興味を持った。各自治体の新年度予算が発表されている。公共事業一つひとつに多くの夢とドラマが詰まっていることを知らしめたい。(群馬・HI)

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