コラム

2008/04/02

地球よりも重い人の命(埼玉・YK)


▼2003年4月3日、三重県の鈴鹿サーキットで行われたオートバイMOTOーGP決勝で、天才レーサー加藤大治郎選手がシケインと呼ばれるカーブで転倒した。加藤選手は数日後、鈴鹿市内の病院で息を引き取った。モータースポーツが市民権を得ている欧州先進国では彼の死を悼み、一般紙が号外を出すほどショッキングな出来事だった

▼彼が転倒したシケインは時速170キロから70キロまで急激な減速を強いられるコーナーで、当該事故発生以前から多くの二輪選手がセーフティゾーンが少なすぎるとその危険性が指摘されていた。しかしサーキットの改修は後手にまわり、悲惨な事故につながってしまった

▼埼玉労働局と建災防埼玉県支部がタイアップして進めてきた「墜落ゼロ一斉点検」を契機にその成果が上がってきている。この運動は、死亡災害のうち墜落・転落災害の占める割合が非常に高く、死亡災害に直結していることから、毎月1日を建設現場の一斉点検日と定め、事業者に現場を自主点検してもらい建災防埼玉県支部にその結果を報告するもの

▼18年の死亡災害は16件となり過去最小を記録。さらに19年は10件と記録を更新した。記録更新は単純に「墜落ゼロ一斉点検」活動のみで成果を上げたものではない。地道な安全管理、リスクアセスメントの考え方や、墜落防止のための道具の発達などが効果的に絡み合った結果であろう

▼加藤選手が散った事故は、言い換えれば防げた事故でもあった。建設現場にも多くの危険が潜んでいる。危険を予知し、その芽を一つずつ潰していく事が最も大切だ。人の命は地球よりも重い。(埼玉・YK)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら