コラム

2008/06/27

再確認ー素晴らしき建設業(茨城・KK)


▼「昔は新しい道路ができた時など、地元の人々に『ありがとうございました』ってそれは感謝されたもんだよ」ー以前、叙勲の栄に輝いた建設会社の社長をインタビューした際の同社長の回想だ

▼茨城県水戸市の中心街の真下を横断する国道349号のトンネル『梅香(ばいこう)トンネル』を毎日のように利用している。。長い間、近くの水府橋交差点や国道50号との交差点などで慢性的な渋滞が発生していた。それがトンネルの開通により市街地の通過時間が3分の1に短縮され、非常に重宝している

▼小学生の時、国語の教科書で読んだ新美南吉の童話『牛をつないだ椿の木』を思い出す。人力車引きの主人公・海蔵が仲間や通行人のために井戸掘りを発願。菓子を食べるのもやめて貯蓄に励む。2年経って資金が出来て、井戸を掘らせてもらおうと地主に頼みに行くが、なかなか許可してもらえない。重病に陥った地主が主人公の人柄に感じ入り、死の直前に井戸を掘ることを許してくれた

▼梅香トンネルは平成10年から3カ年、総事業費約62億円を費やした。総延長607メートル。ライフラインのすぐ下の軟弱地で極めて難しい工事と言われる。世界のトップレベルにある日本の建設技術と施工業者の威信、技術者のプライドが立派な仕事を支えた

▼「わしはもう、思い残すことはないがや。こんな小さな仕事だが、人のためになることを残すことができたからのオ」海蔵は日露戦争に出征しする時、井戸の水をうまそうに飲み干した。彼は戦争から帰らなかったが、井戸はその後も道行く人々の喉を潤し続けた。建設業の素晴らしさを垣間見た気がする。(茨城・KK)

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