コラム

2008/07/18

理解されない社会資本(東京・JI)


▼「1、2、サァン!」3の付く数字と3の倍数の時に言い回しがおかしくなるお笑い芸人「世界のナベアツ」が人気だ。難解さの無い、ただ数える行為を面白くした芸。しかし多くの人々に浸透している理由はそこにある。シンプルで日常的なものを、ことさら大げさに表現することで、誰にでも理解できる笑いを提示している

▼「整備や事業という言葉は、国民に届かない業界用語だ」栢原英郎・土木学会長の就任会見での発言である。たしかに子供や主婦はこれらの言葉を使わない。旺文社の国語辞典によると『整備』は「いつでも使えるように準備しておくこと」そして『事業』は「目的と計画をもって経営する経済活動」とある

▼『社会資本』も難しい言葉だ。たとえば小学生が道を歩いて学校に行くとする。彼は道について「自治体が整備した社会資本」とは考えない。単純に『道』である。日常で使われない言葉は一般社会には浸透しにくく、また理解されることもない

▼国語辞典によると『社会資本』とは「個々の企業が経済活動を行うのに必要な産業関連施設」、日経経済用語辞典では「国民経済全体の基礎として、その円滑な運営を実現するためにあるもの」とある。インターネットの百科事典ウィキぺディアでは「企業・個人の双方の経済活動が円滑に進められるために作られる基盤のこと」

▼一般に浸透していない専門用語を並べて「社会資本整備事業は必要だ」と叫んでも「いったい何の話なのか」と返されてしまうのがオチだ。もっとシンプルで人々の心に届く言葉はないものか。世界のナベアツならば、どんな言葉を選ぶだろうか。(東京・JI)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら