コラム

2008/09/02

忘れ去られた石綿被害(茨城・HN)


▼いっときは毎日のように報道されていた石綿(アスベスト)の被害も、最近ではめっきり聞かれることが少なくなった。人の噂も七十五日のようだが、何の処置もされずに、いまだ点在する建物も数多いのは現実のようだ

▼厚生労働省がことし6月に発表した「石綿による健康被害に係る給付の請求・決定状況(平成19年度)」によれば、建設業の肺がん労災認定が248件で、全業種を含む肺がん労災認定件数501件の約半数を占めている。中皮腫の労災認定では、建設業が236件で、これも全認定494件の約半数。また、石綿救済法に基づく特別遺族給付金の給付件数でも、肺がんが全47件中11件、中皮腫が全43件中18件と多い

▼日本政府は、平成18年、クボタ旧神崎工場(兵庫県)の周辺被害などをきっかけに「石綿による健康被害の救済に関する法律」と被害防止のため石綿の除去を進める関連3法(改正法)を可決し対応を図った。これが万全ではないようだ

▼各自治体でも、こぞって建築物のアスベスト調査を実施し、アスベスト除去や封じ込め対策、建築物の解体などを行ってきた。だが整備が完了したのか、最近では予算に計上される費用も少ない。また自治体によっても、取り組み状況に格差が見られ、心配な状況だ

▼環境省によると、建築物の解体によって、アスベストの排出量が10〜30年後にはピークを迎え、年間約100万tのアスベストが排出されると見込んでいる。今後の解体にあたっても建築物周辺の住民への影響が懸念される。世間を騒がす前に、国の対策は万全だろうか。市民の目で推移を良く見守りたいものである。(茨城・HN)

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