コラム

2008/11/19

ヘンな建物を抜けて(新潟・HT)


▼自宅から、市街地に抜ける近道を説明する時に「あのヘンな建物の道を抜けて」ということがある。地元の地理とその建物を知る人間には、方角や路線名を説明するより理解が早い。昔から「ヘンな建物」と呼んでいたが、それが博物館であることを知るのは、だいぶ後になってからである。そして「ヘンな建物」を著名な建築家がデザインしたことを知ったのは、つい最近だ

▼「ヘンな建物」は、天然記念物の渡り鳥オオヒシクイの生息地である新潟県福島潟沿いに建ち、一面ガラス張りで、巻貝を逆さにしたような形をしている。同施設は、福島潟を一望できる展望台と博物館を兼ねており「ビュー福島潟」という正式名称があるが「福島潟沿いのヘンな建物」のほうが分かりやすい

▼ランドスケープアーキテクトと言う言葉がある。何かをデザインする際に「その土地の持っている資源を評価して、その場にあったコンセプトをもとに、そこにしかない風景を創っていく分野」である

▼長岡造形大学学長の上山良子氏は、ランドスケープアーキテクトの第一人者だ。上山氏は、「場」を読み、「時代」を読んだ上で、「人」を読む。つまり、どんな人達が、どのように使っていくかなどを考えるという

▼ビュー福島潟は、ランドスケープの観点から見れば、福島潟という「場」に、オオヒシクイの越冬という「時代」を、見に来る「人」の施設であると考える。周辺を一望できる巻貝のような形も、全面ガラス張りも「ヘン」ではなく「合理的」とさえ思えてくる。それにしてもまさか「ヘンな建物」と呼ばれるとは、建築家も予期していなかっただろう。(新潟・HT)

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