コラム

2008/12/15

海を渡ったトキ(新潟・SS)


▼9月に佐渡で放鳥されたトキが海を渡り新潟市でも目撃された。開催を間近に控えた第64回国民体育大会・トキめき新潟国体のマスコットキャラクターの『トッキッキ』。県鳥であるトキのつがいがモチーフで、丸みを帯びた体型が愛嬌がある。案内の看板に描かれ、かわいらしい姿を県内各所で見ることできる

▼子供の頃のトキのイメージは、乱獲や自然環境の変化によって、絶滅する運命にある悲しいシンボルのように感じられた。特に1981年野生のトキ5羽がネットで捕獲された時は、これで絶滅してしてしまうのかと、寂しい気持ちになった

▼日本産トキは残念ながら2003年のキンの死亡により途絶えてしまったが、中国産のトキの人工繁殖により年間約20羽ほどの雛が孵るようになっており、現在は120羽以上になっている。佐渡では平成27年までに60羽の定着を目指し、放鳥・定着スケジュールが計画されている。9月の放鳥はその1段階であり、今後の調査が期待されている

▼また、トキに必要な環境を作るため、減農薬の稲作に切り替え、エサ場となるビオトープを作るなど野生化に向けた動きがある。一方では高齢化の進む農村で、農薬の使用の制限や手間のかかるビオトーブ管理などは難しいこともあり、生物的・自然環境的提案だけではなく、住民との生活のバランスの取れた立案が必要とされている

▼環境の指針として「トキが住めるようになった」となれば素晴らしいことではあるが、環境作りはまだ始まったばかりで、様々な課題もある。本州に飛来した2羽のトキは『佐渡だけの問題ではないんだよ』と告げているに違いない。(新潟・SS)

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