コラム

2009/02/20

「火の用心」の季節(茨城・HS)


▼この時期、全国各地で火災による死者が続出している。暖房器具を使用し、空気が乾燥するこの季節、火の元には十分な注意が必要だ。関東地方在住の筆者も、強風と少雨のせいで子どものころから火の用心を強く言われて育った

▼先月、松戸で子ども3人が死亡する火災が起きた。母親は外出中で、家には幼い子どもだけが残った。生後6カ月の赤ちゃんもいたのに、どうして家を留守にしたのか。その理由はパチンコだった。しかも、警察の聴取では当初、病院へ行っていたと嘘の説明をしていたというのだからなんともやりきれない思いである

▼記録に残る江戸時代の大火も、この季節に集中している。当時の建物は木造だから、一度付いた火を消すのは容易ではなかった。明暦の大火(1657年)では、10万人にものぼる死者が出たとされている。その原因は諸説紛々。幕府が江戸の町を都市改造するために放火したという説まである

▼耐火建築物や消防体制が充実している現代では、火災だけで当時のような被害が発生するとは考えにくい。平成18年6月の改正消防法では、住宅用火災警報器の設置が義務付けられた。それも過去の教訓から学んだものであり、同じ悲劇を繰り返してはならないという固い決意の表れだ

▼火は有益である一方、使い方次第で残酷なほど有害にもなる。「対岸の火事」が飛火してこない保証はどこにもない。火災を防ぐ上でもっとも大切なのは、絶対に火事を起こさないという普段の心構えだろう。家は建替えればそれで済むが、人命は不可能だ。冷え込みの厳しいこの季節、火の取り扱いだけは十分気を付けたい。(茨城・HS)

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