コラム

2009/08/27

無駄な治水事業はない(東京・UT)


▼この夏、7月の中国・九州北部豪雨で、山口県や福岡県などで30人の方が亡くなった。ここ数年、ニュースで「記録的な豪雨」や「ゲリラ豪雨」という表現を何度も耳にする。治水事業の重要性は、ますます高まっている

▼「犠牲者ゼロ」に向けて、ハザードマップ作成や避難訓練、洪水予報などソフト面の取り組みが大切なことは論を待たないが、より根本的な対策はダム、堤防、河川改修などハード面の整備であることを否定する人は、少ないのではないか

▼日本は世界でも有数の多雨地帯に位置し、年間平均降水量は、世界平均の約2倍といわれている。地形が急峻のため河川は急勾配。川の流れは勢いがあり、豪雨時には一気に洪水となって流化する。また、これも有名な話だが、諸外国の多くの都市では、市街地の最も低いところに川が流れているものの、日本の都市では、市街地より高いところを流れる川が多い

▼さらに日本の場合、人口の約50%・資産の約75%が、洪水氾濫区域(国土面積の10%)に集中してしまっている現実がある。誰が考えたって、諸外国よりも治水事業に力点を置かなければならない環境下にあるのは明白である

▼従来は想像もしなかった豪雨が、実際に起こっている。国交省河川局によると、過去10年間に約98%以上の市町村で水害・土砂災害が発生している現実がある。地球温暖化、気候変動などで、この先、もっとひどくなる可能性が高い。誤解を恐れずに言えば、人命のためにも、無駄な治水事業などというのは一切ないのである。こうした主張を、堂々と言えない世の中になっている。間違いなく後世に禍根を残す。(東京・UT)

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