コラム

2010/11/11

ミスマッチ解消は難しい(東京・JI)


▼こぼれ落ちるような悲しいメロディーをピアノが奏でる。低く寂しいチェロの音色が会場に響きわたる。観客は沈み込んでいく音楽に耳を傾けながら、下を向いて座る中央の男性に目を向ける。突然、会場の端にいた男性たちが野太い声で「ファイトー」と叫ぶと、中央の男性が筋骨隆々の体で踊り始めた

▼機会あって大学生の『男子新体操』というものを初めて見た。跳躍や空中回転、倒立の技術には驚くばかり。男子新体操を題材にしたTVドラマが今春に放送されたこともあり、最近は注目されているらしい。選手たちは全国大会の上位者で、技術の高さは素人でも理解できた

▼しかし「ファイトー」「ヒューヒュー」という声が、音楽とミスマッチなのである。演技は真剣そのものだが、ボサボサの髪やドスの効いた応援を見ると、あくまでも彼らは体育会系と改めて認識。裸体に油を塗って微笑みながらポーズを決めるボディビルコンテストと、どこか似ている

▼建設雇用でもミスマッチは存在する。ある調査では、某県内における土木系技術者の採用枠は官民合わせて約50人。しかし同県内では大卒や高卒など毎年約300人の土木系技術者が誕生しているという。若者が学んだことを活かそうとしても、その門は狭い。しかし受け入れる側も景気低迷や公共事業削減で厳しい

▼発表会では、競技種目にはない大縄跳びも披露。アップテンポのリズムの中、選手たちは縄を飛ぶたびにガッツポーズやコミカルな動きで観客を楽しませる。彼ら自身も運動そのものを楽しんでいるようだ。この時ばかりは選手と音楽と応援がマッチしていた。(東京・JI)

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