コラム

2011/01/22

今こそ「中山隧道」の精神(新潟・KK)

今こそ「中山隧道」の精神

▼昨今「真に必要な公共事業」という言葉が飛び交う。本年度に公共事業費を大幅に削減した民主党政権であるが、菅首相も「真に必要なインフラ整備は戦略的に進める」と発言している。では「真に必要な」ものとは一体何なのだろうか。

▼新潟県の旧山古志村(現長岡市)と旧広神村(現魚沼市)を結ぶ877mの「中山隧道」は手掘りの隧道としては日本一の長さを誇る。現在でもツルハシの跡がそのまま残り、先人たちの魂に触れ、感動を与えてくれる土木施設として観光客も多い。また2006年11月には土木学会の「土木遺産」に認定されるなど、土木施設としての価値が高く評価されている。

▼豪雪の山村である山古志において資金や道具が満足にない中、住民が自ら隧道を掘ることを決意し、ツルハシ一つで、16年の歳月を費やしながらトンネルを掘り抜いた有様は公共事業の原点といわれ、その先人の功績は『掘るまいか〜手掘り中山隧道の記録〜』として映画化もされた。

▼「中山隧道」を造った原点は冬場には陸の孤島と化す村で住民の生命と生活を守るために、必要な生活道路(隧道)がなければ村の未来はないと考えたことにある。また、県が一部資金を出すまで身銭を切って掘り続けた住民の情熱には頭が下がる。

▼04年に発生した新潟県中越地震から6年が経過したが、「中山隧道」は地震で村が壊滅的なダメージを受けた中、現在も変わらぬ姿で残っている。硬い岩盤を掘り続け、戦争による中断も乗り越えながら、子々孫々の繁栄を願って完成した。真に必要な公共事業とは何かを、現代の我々に教える良い例である。(新潟・KK)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら