コラム

2011/03/30

プロの心意気について(群馬・KS)

プロの心意気について

▼群馬県前橋市にある多目的イベント施設、グリーンドーム前橋では、施設自体の老朽化を受けて大屋根や外壁の大改修が着々と進められている。工事は2010年度から3カ年計画で進められ、大屋根工事は傷んだ銅版の上部に断熱材と銅版色に近い色に着色したステンレス材を一枚ずつ溶接していく。

▼先日、大屋根の現場を取材するという貴重な体験をした。現場は、日当たり、見晴らしも良好だ。関係者でもなかなか足を踏み入れられないような場所だった。その反面、強風や真夏の太陽の照り返しに注意が必要な現場でもある。ただ、風速や気温は、前もって情報を入手できるし水分補給で健康管理も行える。予期せぬ大地震以外は。

▼開いた口がふさがらない。それ以上の予期せぬ大地震が3月11日に発生した。東北地方太平洋沖地震と命名されたこの日、揺れ動く足下に物怖じせず、安全確認に向かう現場責任者がいた。「地震で大屋根のワイヤーが切れないか心配で確認に急いだ」と話す。

▼グリーンドーム前橋の大屋根は、張弦梁で建設されている。屋根を支える柱と引っ張り合うワイヤーによってバランスを取っているが、地震当日は大屋根も波打ち、作業員らは退避を余儀なくされたらしい。ただ現場責任者や発注者の工事担当者は大屋根を見上げられるメインイベントエリアの中心に立ち大屋根の安全確認をしていた。

▼現場の安全は第一。マグニチュード9・0の大地震という緊急事態にも怯まず、大切な現場の状況確認へ向かうプロの心意気に頭が下がる思いである。仕事としてか、責任者としてか、何が彼らを現場に向かわせたのだろうか。(群馬・KS)

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