2011/04/12
向き合う、見つめ直す(東京・UT)
向き合う、見つめ直す
▼10年間勤めた外資系企業を退職し、この4月から、公立高校教師として赴任した友人がいる。エンジニアからの大転身。決断した心象風景は、どういったものだったのか。
▼奥底の部分は、本人にしかわからない。ただ以前、「ほとんどの時間、パソコンと向き合って仕事をしている。とことん人間を相手にした仕事がしたい」と話していた。もちろんそれだけが理由ではないだろうし、そんな単純なものならば、生徒さんも迷惑。大学や就職先を決める時にはその道を選ばなかったものの、きっと、教師への潜在的な思いはあったということだと解釈している。ここ数年は、仕事と教職免許取得のための勉強とを両立させていた。確固とした目的があればこそ、ハードな生活を乗り切れたということか。
▼職業を変えることがうらやましいとは思わない。ただ、自分の生き方を真剣に考えて、向き合っているという点においては、同じ年の友人ながら、尊敬の念を抱く。一からのスタートに踏み切る勇気と、目標を達成するための努力。そして何より、実現させたこと。
▼日々の生活に流されている中では、自分と真剣に向き合うことが難しい。自戒を込めて思う。触発される人物と接した時や、非日常の事態が起こった時、想定外の状況に陥った場面でこそ、考えることがある。当たり前のことを見つめ直すきっかけになる。
▼5月になったら、くだんの友人と会おう。どんな話が聞けるだろうか。いきいきとした姿が、もう目に浮かんでいる。また、そうあってほしいとも思っている。計画停電で懐中電灯二つのみの真っ暗な家で、そんなことを考えた。(東京・UT)