コラム

2011/04/14

明かりに見る価値観(新潟・CY)

明かりに見る価値観

▼新潟市内のとある庁舎で、真っ暗な長い廊下を歩いた。週に一度は必ず訪れる場所。いうまでもなく節電中なのであるが、普段は昼間でも照明が点いていたという事実を、このときまで知らなかった。

▼お彼岸にお邪魔した古い民家で、またまた「あれっ」と思った。ここは平素となんら変わらず明るい。辺りを見回し、節電に非協力的なのではなく、太陽光だけの明るさだと気づいた。昼間は照明に頼らなくても、十分に採光できるようにつくった先人の知恵を、文字通り体感した。

▼「持続可能な、再生可能な、循環可能な…」。近年、環境意識の高まりで、こうした声がそこここでよく聞かれた。付加価値の高い「質」を求めると、当然持ち出しは多くなる。経済状況もあいまって、特に住宅分野の取材を通じて感じたのは、こうした示唆はかすみがちで、所詮建前なのでは、ということだった。

▼しかし、戦後最大の大惨事をもたらした震災から、豊かさをめぐる人々の認識は大きく変わりつつある。この試練が、この先予見させるものの中には、前向きな何かがきっと含まれていると信じたい。

▼各国の被災地で活動を続ける建築家のマイケル・レイノルズ氏が先日、ラジオのインタビューに応じていた。巨大ハリケーンに襲われたニューオーリンズ、大地震に見舞われたハイチやニュージーランドなどで、壊れた家の廃材等を使って本格的なエコ住宅を提供している。

▼提唱するバイオテクチャーは、建築は生き物という意味の造語だ。「原子力発電に頼らず、ソーラーシステムや水の循環を最大限に活用すべき。それは災害時に限らず、生き物にとって恒久的なものだ」。(新潟・CY)

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