コラム

2011/04/26

暫定基準値の魔力(茨城・KS)

暫定基準値の魔力

▼もう一つの災害、「風評被害」が甚だしい。昨冬猛威を振るったインフルエンザのごとく伝染して、人の思考回路をむしばみ、冷静な判断を削ぐ。厄介なことにワクチンやマスクのような防護策は見当たらない。ただあるとすれば、テレビや新聞を見ないことぐらいだが、このご時勢には無理難題である。

▼農業大国茨城では福島原発の事故の影響で、出荷規制された野菜以外の産物までもが敬遠されている。また、風評の魔の手は海産物にまで及ぶ。福島に隣接する北茨城市では、コウナゴから暫定基準値を上回る放射性物質が検出されたが、それ以外の魚はいたって正常にもかかわらず、市場で買い取ってもらえないという。そして県内全域で漁が休止になる大惨事に。?茨城?という文字が冠されるだけで何もかも拒絶されるのは悲しすぎる。

▼大手スーパーのイトーヨーカドーやイオンなどでは、特別コーナーを設けて茨城産の野菜の販売を強化している。価格下落は避けられないが、それでも?安全でおいしい?ことをPRしてくれるのはありがたい。本来ならベクレルなど耳慣れない言葉を連発する前に、国が即座にやるべきことであろう。

▼そもそも「暫定基準値」なるものの存在意義を疑う。?基準値の5倍?などと言われれば、たいていの人は尋常でないと感じる。しかし100倍も厳しく設定されたものであり、世の中を混乱させるこのような基準値は必要ない。

▼何より昨今の情報過多社会で我々に求められるのは、本質を見極める「眼力」だ。基準値に惑わされている場合ではない。風評に動じず、日本再建にまい進するのみである。(茨城・KS)

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