コラム

2011/06/17

敗戦や失敗を活かす(茨城・KK)

敗戦や失敗を活かす

▼「負けに不思議の負けなし。勝ちに不思議の勝ちあり」…「ノムさん」の愛称で親しまれる野村克也氏。プロ野球選手、監督、野球解説者それぞれの立場で素晴らしい記録と記憶を残したビッグネームだ。テレビインタビューなどでの人生案内のような示唆に富んだ数々の名言に、思わず膝を打ったことも多い。

▼政府は東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて「事故調査・検証委員会」を設置。委員長には『失敗学のすすめ』(講談社刊)などの著書で知られる畑村洋太郎東大名誉教授の起用が決まった。畑村氏は文部科学省・失敗知識活用研究会・実行委員会総括、日本航空・安全アドバイザリーグループ委員、JR西日本・安全有識者会議委員などを歴任。まさに「失敗学」の第一人者だ。

▼「世界の3大失敗」といわれるタコマナローズ橋の崩落、コメット飛行機の墜落、リバティー船の沈没。しかし、これらは徹底した事故の調査と原因と向き合うことで、橋梁架設、航空工学、造船技術の分野で、大きな飛躍の機会を得た。一方日本では、自動車メーカーのリコール隠し、食品会社の品質管理など、失敗の隠ぺいが事態をさらに悪化させた。

▼ラッキーなワンパンチでの逆転KO勝ち、ヤマがズバリ当たって試験に合格。不思議な勝ちは、ままあり得る。逆に負けには必ず理由がある。力量不足、コンディション不良、単なる怠慢…。

▼著書の中で畑村氏は「『見たくないものは見えない』という人間の性質、組織の性質が失敗を誘発する」―失敗情報の共有と活用を呼び掛ける。なるほど、誰のミスとか、誰が悪いとか追求しているうちはまだまだだか。(茨城・KK)

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