コラム

2011/07/23

幻のCMに学ぶ(新潟・TH)

幻のCMに学ぶ

▼某テレビ番組の司会者が「このCM、視聴者の皆様にも是非、観ていただきたかったんですけどねぇ。本当にいいCMですから」と言っていたのを耳にした。その時は気になったが、全く忘れていた。それが、このほどカンヌ国際広告祭のアウトドア部門で金賞を受賞したJR九州の九州新幹線全線開業「祝!九州」キャンペーンのコマーシャルである。

▼しかし、このCM、あまり見た人がいないかもしれない。九州新幹線は全線開業のイベントを今年3月12日に行う予定であったが、前日の3月11日に発生した東日本大震災の影響で、イベントは中止、それともにこのCMもお蔵入りしてしまったからだ。

▼CMは、今年2月に、7色に特別にラッピングした新幹線を走らせるので「新幹線に向かってウェーブやパフォーマンスをしてください。コマーシャルに映るかもしれません」と呼びかけて、鹿児島中央駅から博多駅までの区間、九州新幹線の車両からカメラを回し制作された。

▼レオタード姿で踊る少女達、子どもを肩車しながら走るお父さん、学校のグラウンド・プール、田んぼや畑、川の上や歩道橋の上から笑顔で手を振る人々…。呼びかけに応じた1万500とも2万人とも言われる人たちが新幹線開通を祝っている。みんな笑顔で、楽しいCMなハズなのに、なぜか泣けてくる。

▼先ごろ、世界銀行が2011年の世界経済見直しの改訂版を公表。日本のGDP(実質国内総生産)の伸び率は0・1%増とほぼゼロ成長にとどまる見通しだ。被災地の復興、日本経済の復興…。今、日本に必要なのはあのCMのような前向きな一体感なのかもれない。(新潟・TH)

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