コラム

2011/09/01

「釜石の奇跡」の声(東京・HM)

「釜石の奇跡」の声

▼時折、声を詰まらせながら、それでも4人でバトンタッチして最後まできちんと話しきった。「釜石の奇跡」と呼ばれる釜石東中学校の生徒たち。甚大な津波被害を受けた東日本大震災の中で、地震発生時に学校にいた生徒全員が高台に避難して助かった。その経験報告会。場内は大きな拍手に包まれた。

▼これまで防災訓練を重ねてきた彼らは、地震後速やかに避難行動を開始。隣接する鵜住居(うのすまい)小学校の児童も連れ高台を目指した。「訓練どおりにやれば問題ない」「小学生を守らなくちゃ。大丈夫だよと話しかけた」と必死に冷静さを保った。

▼やがて津波が襲来。「津波の音、逃げろと言う声の中、上へ上へ逃げた。あまり覚えていない。後ろは振り返らなかった」。高台まで避難してもう大丈夫だとしゃがみ込んだ。この時彼らはきちんとした備え、速やかな避難により津波から逃げうることを証明したのだ。

▼彼らは、それまでの訓練や震災を通して、普段のことを真剣に行うことの大切さを学んだと言う。そして大人を信じること。お年寄りは知恵を授けてくれることなどを知った。今後は自分たちの体験を広く伝えていきたいと話す。思わず涙が出そうになる。

▼話す―ということは、その都度、その時の恐怖を思い出すということ。どれだけの覚悟で話すことを決意したのか。その小さい肩に乗った荷物をきちんと背負おうとしている、重い言葉だ。その言葉に応えるためには、我々が自分の立場でできることを探し、具体的な行動を開始すること。それを促すために、彼らはこれからも必死で声を発していくのだろう。(東京・HM)

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