コラム

2011/09/07

介護施設の善し悪し(群馬・KS)

介護施設の善し悪し

▼「利用者の立場になって使いやすさを考える」。介護施設の建設事業者への取材先で言われたことばだ。何不自由なく多忙な日々をおくっていると、気づくことがない細かな設備やレイアウトに違和感を覚えたことがあるらしい。当事者からの指摘、客観的な見識。改めて現状の話を聞くと、目からうろこだった。

▼事業主は、介護施設ができ上がるまでに何度も現場を往復し、細かい部分まで利用者の今後を考えて、施工者や設計者と打ち合わせを繰り返す。今利用する人たちが5年後、10年後にどう変わるかを見据える大変なイメージ伝達作業だ。

▼「例えば半身不随の人がトイレを使うとき不便であろう」。効率性のイメージがわかない。「トイレットペーパーの設置位置を変えて、右不随の人や、左不随の人に対応できるものにしていかなければ」と言う。一般的に、ロールは左にあることが多いと筆者は考える。その一般的な部分に使いやすさの面で問題があるようだ。

▼自分で体験してみなければ気付かない施設設備。日常の生活では、スムーズな動きも、人体機能のどこかを欠けば、日常が非日常に変わる。「施設をつくる方たちに介護現場のようすが少しでも伝わって欲しい」。そう語る事業主は、利用者の今後の日常に健全者と同等のスムーズかつ利便性を求めている。

▼今後、福祉施設は今の10倍くらい建設されていくだろう。将来建設される施設が、管理者のためでなく、利用者のために整備されることが一番望ましい。介護施設は、管理する施設ではなく、ケアする施設である。管理するための施設では、利用者のニーズには応えられない。(群馬・KS)

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