2011/09/08
当たらなかった恋占い(東京・JI)
当たらなかった恋占い
▼喫茶店で、隣に座っていた30代ぐらいの女性2人の片方が声を上げて泣き出した。話の内容から察するに、号泣している女性はプロの占い師。彼女は占いの師匠と交際していたのだが「だまされた」らしい。自らの恋を占った際は『相性が良い』と出たのだが、これが大ハズレ。このため自信を失い、仕事も辞めたいのだという。
▼もう片方の女性は「自分のことは占えないよ。だって主観が入るんだもん。無理だよ」と励ます。しかし体をぶるぶるふるわせながら泣き崩れる彼女は「占いの話し方も先生に教わって、体に浸み込んでいる。もう嫌だ」。どうやら彼女は前日、酒を浴びるほど飲むという自傷行為もしたらしい。妙に静まりかえった喫茶店内に、彼女の「ぐえっぐえっ」というカエルのような泣き声だけが響き渡っていた。
▼苦しい思いは、失恋の時だけに起きるわけではない。経済状況も人に試練を与える。被災地以外の建設業をめぐる経営環境は厳しさが続いており、公共事業の減少も変わらない。たとえ酒を浴びるように飲んだところで、状況は何も改善しない。
▼この厳しさがいつまで続くのか、見通しは立てられない。あるいは、いつまでも延々と続くのかもしれない。将来の好機を期待できないならば、今の状況で生き残る方策を探るしかないのだろう。
▼恋に破れた女性占い師は「男はみんなクズだ」と吐き捨てた。なだめる女性は「そんなことないよ。良い人もいるよ」。その通りである。問題は、人の善し悪しを見抜くのは難しいということ。ましてや未来など、占いでわかるはずもないのでは。それは、自分でつくるものだ。(東京・JI)