コラム

2011/10/05

避難と事前準備の難しさ(群馬・HI)

避難と事前準備の難しさ

▼進むべきか退くべきか―。台風12号が迫る9月1日の朝、記録的な豪雨に見舞われた群馬県前橋市内を自動車で取材先に向かっていた筆者は、冠水した道路を目の前に考えた。

▼でもそれは一瞬のことだったと思う。ゆっくりではあったが走行中だったこと、後方から大型トラックが車間距離を詰めていたこともあり、自分の中で結論が出ないままアクセルを踏み込んだ。ズブズブとした走行感覚にハンドルをとられ、「エンジンルームに水が入りませんように」と祈った。

▼筆者が向かっていたのは、9月1日の防災の日にあわせて開かれた木造住宅耐震化の講習会。雨は瞬く間に勢いを増し、片側2車線の道路は歩道にまで水嵩が達し、道路上のラインも認識不能。ハンドルをとられた時は、少し不思議な感覚だったが、幸いにも冠水区間を無事通過。取材先に着いた時は、会場の人影はまばらだった。

▼人が災害に遭遇した時、最優先することは何だろうか。そう問えば「生命の安全」「避難」と多くの人が当然のように応えるであろう。しかし災害に遭遇した時、スムーズな避難を困難にし、大きな被害につながってしまう一因は、現場の判断の難しさにあると思う。避難が最優先だとわかっていても、現場で見聞きした情報が避難を遅らせることもある。現場にいるからこそ見えないことは意外に多い。

▼講習会のテーマである木造住宅の耐震化。東日本大震災以降、特に関心が集まったテーマだが、半年以上も経つと関心が薄れてきたと関係者は言う。まとまった資金が必要なことがその理由の一つだ。避難と事前準備の難しさをあらためて感じた。(群馬・HI)

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