コラム

2011/11/03

貴重な幼少期の記憶(埼玉・HK)

貴重な幼少期の記憶

▼人間は、幼少期に経験した記憶のほとんどを忘れてしまう。正確には、引き出しの奥に仕舞い込んでしまうという表現が適当だと聞いたことがある。何かの拍子に、忘れていた記憶を思い出すという体験もよく耳にする。

▼それに反して、一度深く心に刻まれた記憶は忘れることが難しく、いわゆるトラウマと呼ばれる現象も珍しくない。また、虐待などを受けた者が自分の子どもを虐待することも多いことから、記憶と経験を軽視するのは非常に危険だといえる。

▼先日、テレビ番組でフラミンゴの映像を見て、ふと思い出したことがある。それは8歳のころ、2001年に閉鎖してしまった千葉県勝浦市の行川アイランドでの記憶だ。そこで、1羽の鳥と出会った。案内板には、飼い主に放置され〈ルビ〉自咬症〈じこうしょう/ルビ〉になった事情とともに、「かわいがってあげてください」と書かれていた。白い羽がまばらになってしまったその姿は、幼い心に強い衝撃を与えた。

▼その鳥は、オウム目インコ科のオオバタンという。名前は「タロウちゃん」。調べるほどに当時の記憶がよみがえる。タロウちゃんは枝木に停まり、人間のまねをして自らの名前を呼んでいた。オウムなどが相手のまねをするのは、求愛の意があるという。人間に辛い目にあわされても、人間を愛することを止めなかったのだ。

▼幼少期の経験を思い出したことで、虐待の悲しさ、むなしさ、命の尊さを再確認できた。そして、タロウちゃんから感じ取ったことを、未来に伝えていこうと改めて思っている。次に踏み出す一歩が、重要な記憶の引き出しを開ける鍵になるかもしれない。(埼玉・HK)

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