コラム

2011/11/25

思いがけない偶然の発見(茨城・KK)

思いがけない偶然の発見

▼最近よく「セレンディピティ」という言葉を耳にする。何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力を指す言葉。たとえば、たんすの引き出しをひっかき回し、手袋を探していたら、何年も前に失くしたと思っていた腕時計を見つけたりする。誰しもそんな経験があることだろう。

▼1895年、ドイツの物理学者ウィルヘルム・レントゲンのX線の発見は、偶然の出来事だった。真空管から出る電磁波を研究中、光が漏れ仕事がやりにくいので、黒い紙で周りを覆ったところ、そこからも光が出できた。放射線は1m以上も貫通し、人間の骨格を写真フィルムの上に記録する。X線は世界中の病院で日常の診療に使われるようになった。

▼東大生に一番読まれた本として知られる150万部の大ベストセラー『思考の整理学(ちくま文庫)』の著者・言語学者の外山滋比古氏は常にメモ帳を持ち歩く。「ひらめきは一瞬で消え、二度と戻ってこない」からだ。

▼マジックテープが、よく衣服にくっつく「オナモミ」という植物をヒントに生まれたのは有名な話だ。普通なら「いやだなあ」で終わりだが、スイスのジョルジュ・デ・メストラルという工場経営者は試行錯誤を重ね、巨万の富を得た。

▼セレンディピティが偶然の発見といえども、気持ちが前もって充実していることが「天才的ひらめき」の条件だ。フランスの細菌学者ルイ・パスツールは「チャンスは、待ち構えた知性の持ち主だけに好意を示す」と。ノーベル賞級の学者でなくても、思いがけない発見は、心がけ次第で、われわれの身にも起こり得るかもしれない。(茨城・KK)

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