コラム

2012/03/03

減り続ける単価の余波(東京・HM)

減り続ける単価の余波

▼低所得者ほど生活習慣が悪いというデータが厚生労働省から発表された。肥満、朝食欠食、運動習慣がない人などが多いという。金銭的なゆとりのなさが生活を悪くしている結論だ。

▼工事現場近くの道路で、こんな光景を見た。単管を無造作に担いだ若い作業員が、お店の看板にぶつけてしまった。結構大きな音がしたが、振り向きもせず去っていく。単にがさつな人だったのかもしれないが、ちょうど労務単価低下の話を聞いた直後だったため、給料が安いと仕事にも影響がでるのか―と妙に納得してしまった。

▼建設労働者の今の賃金。職長クラスで年収300万円程度、一般の職人では250万円前後、中には200万円に届かないケースもあると聞く。安い。その影響もあり昨年の夏は、あらゆる職種で労働力不足が見られた。それはそうだ。あの酷暑の中の肉体労働とクーラーの効いたコンビニのバイト。金額が大して変わらないとなれば、クーラーを選ぶ人が大半では。いくら物を造りだす建設業の素晴らしさを説いたところで無意味に近い。

▼労務単価の低下は、労働力不足という目の前の問題と、若年入職者の低下という将来的な課題を併せ持つ。単管をぶつけても振り返らない背中。もっと丁寧に、と思う筆者の心の声に、そこまでの金はもらってない―という返事が聞こえてくるようだ。

▼「職人技」。かたくななまでに手を抜かないのが職人の矜持だったはず。看板が発したカーンという渇いた音が、建設業界の寒々しい状況を現しているようで、焦りのような危機感を覚えた。今こそ抜本的に単価のあり方を考え直すべき時期ではないだろうか。(東京・HM)

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