コラム

2012/04/12

求められる独創性(

求められる独創性

▼小学生の息子が、学校から特別な手紙をもらってきた。授業で描いた絵が選出され、市の美術展に展示しているから観覧するよう書いてある。特に絵が得意なわけではない愚息が選ばれるとは一大事。こんな名誉なことは今後起きないだろうと張り切って出かけた。

▼美術展では、市内の小中学生による優れた作品が展示されていた。その中に作品を発見したが、あまりの下手さに驚いた。ほかの子の作品と比べて明らかに見劣りするほど線も色塗りも雑である。なぜ、これが選ばれたのだろうか。画用紙に描かれた「海水浴で日焼けしすぎて救急隊員に担架で運ばれる王様」を見て、思わず首をひねった。

▼他人の提示物を評価して選出する場合、そこに評価基準というものがあれば話は早い。基準に合うものは合格、合わないものは不合格。公共工事の入札でも、応札額が一定の範囲内であることが前提で、その中で一番低い価格が選出される。範囲を超えれば失格である。評価基準は、実に便利なツールといえるだろう。

▼しかしプロポーザルのような場合は、明確な基準がないだけに選出が難しい。要求事項に沿っていることは当然で、どれだけ期待以上のものが提案されているか、どれだけ独創性に富んでいるかなど、何が決め手になるかわからない。提案する側も審査する側も、苦しい作業に違いない。

▼愚息の絵は、私見だが間違いなく下手だった。しかし描かれた内容は独創性があったかもしれない。「王様・日焼け・担架」という組み合わせは、通常では出てこない。美術展に選出されたのは、おそらくその点が決め手だったのだろう。(東京・JI)

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