コラム

2012/04/20

樹木の不思議な力(茨城・KS)

樹木の不思議な力

▼陽光眩しく、新緑の輝きが増してきた。過日、茨城県造園建設業協会による福祉施設の樹木剪定ボランティア活動を取材した際、リーダーの方が施設入口に佇む?やしろ?のことを「お稲荷さん」と呼び、丁寧に扱っていたのが印象的だった。

▼樹木と神社仏閣は縁が深い。たいていは木の集まる所に建てられている。なかでも?ご神木?とされるものは樹齢何百年で、幹は太く、高さも群を抜いている。それにもかかわらず長い間、雷にも打たれずに立ち続けていられるのは、その場が何か特別な力で守られているからだろう。

▼ずばり「木」は「気」のことだともいわれる。明治の電気科学者である楢崎皐月氏は、心身共に癒され生命力が湧く所を「弥盛地<いやしろち>」、反対に気力が衰退していくような所を「気枯地けがれち」と名付けた。昨今流行の?パワースポット?に神社仏閣が多いのもうなずける。

▼東日本大震災で岩手県陸前高田市の松原を津波が襲ったが、その中で唯一残った「奇跡の一本松」。何が起きても滅びはしないという不屈の精神の象徴だ。根が腐ってしまったため、残念ながら回復は不可能だが、住友林業の研究所がこの松の種子から苗の育成に成功しており、同地への植え替えを目標としている。また、「桜ライン311」というプロジェクトでは、津波の最高到達点に沿って桜を植樹して、後世に伝えるとともに、避難の目印として役立てるという。

▼花粉症の人にとっては苦しい季節の到来であるが、これも生活改善の啓示と受け止め、改めてあらゆる樹木に感謝し、被災地そして日本全国が「<ルビ>弥盛地<いやしろち/ルビ>」となっていくことを願う。(茨城・KS)

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