コラム

2012/05/09

イヌに教わったこと(群馬・SS)

イヌに教わったこと

▼旅行先の美術館でトリックアートに触れる機会があった。一見すると白と黒の2色が無秩序に配色されただけの代物だった。ゼブラ模様にしか見えなかったが、ある動物が隠れているのだという。見る人が見れば一目でわかるものなのだろうが、小一時間、絵を見つめ続けても皆目検討がつかなかった。

▼見かねた学芸員の方が助け舟を出してくれた。「少し絵から離れて見てみてはいかがですか?」と。アドバイスに従ったらあっさり「イヌ」が絵の中に浮かんで出てきた。一方、向からしか見ていなかったと思い知らされ苦笑いしてしまった。

▼季節は春真っ盛り。一般的に春は肯定的に迎えられることが多いようだ。テレビでも春を迎えて嬉しい様子の道行く人々の声が取り上げられている。あまのじゃくかもしれないが、実は春が嫌いだ。毎年花粉症に悩まされ、目鼻が苦しめられる。しばらく苦しみは続き、外出するのもためらう。

▼少し前に人気お笑い芸人の洗脳騒動がワイドショーを賑わせたが、この騒動にも違和感を覚えた。各種報道はお笑い芸人が一方的に被害者であると報じ、もう一方の当事者を犯罪者だと決め付けているかのようだった。この当事者を弁護するつもりはないが、もう少し双方向からの報道があるべきだ思った。

▼くだんの「イヌ」にはすぐに発見できずに情けない気持ちだったが、このトリックアート「イヌ」に学ばされたように、一方的ではなく多角的に見なければ物事の真実に近づくことはできないのだろう。今後の仕事の糧にしなければならない、と感じた出来事だった。それでも夏が待ち遠しい今日この頃である。(群馬・SS)

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