コラム

2012/05/10

負けるシティホールが船出(新潟・KK)

負けるシティホールが船出

▼新潟県長岡市に先月1日、全国的な注目を集めるシティホールプラザ『アオーレ長岡』がオープンした。5000人収容可能なアリーナと開放感のある「ナカドマ」(屋根付き広場)、市役所、議会が渾然一体となって溶け込んだ全く新しいコンセプトを形にした全国初の複合型施設だ。中心市街地活性化の起爆剤としての役割に加え、震災復興のシンボルとして新たな賑わいを創出するという大きな期待を背負い船出した。

▼施設は木の温もりにあふれた自由な空間が特長で、駅前に立地しながらも、大通りに溶け込んだ巨大空間は、一見すると何の施設なのかは分からない。初めて見る人は、ここに市役所が入っているとは思わないだろう。

▼設計を手掛けたのは日本を代表する建築家・隈研吾氏。同氏が提唱する「負ける建築」をどの様に表現するのかが注目されたが、周囲の環境に溶け込んだ独創的な建築物は、まさに期待に違わぬ出来映えで、無限の可能性秘めた空間として長岡の新しい「顔」を生み出した。

▼隈氏はオープンを祝う市民のつどいで「これからの建築で一番大事なのはコミュニケーション。人間と人間がつながり、絆を深めるために建築が新たなコミュニケーション空間でなければいけないという時代が始まった」とし、『アオーレ長岡』がその象徴であると述べた。

▼市民が楽しみながら自由な発想で使いこなすことによって成長していく施設。イベントが相次ぎ、早くも多くの来場者を集めている。国土交通省の「まち交大賞」を受賞し、総工費に約131億円を投じた巨大空間の真価の創造は、利用者の手に委ねられている。(新潟・KK)

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